離婚事件依頼の前に別居は必要?

1 はじめに

離婚に関するご相談の際、「これから夫(妻)との間で離婚に向けた手続きを進めていきたいのですが、その前に別居を始めた方がいいでしょうか?」とのご質問をいただくことがよくございます。

今回のコラムでは、離婚の手続きを進めていく上で、「別居」が必要かどうか、または、した方がいいのかにつきまして、法的な側面も含め、検討していきたいと思います。

2 離婚前の別居は必須ではない

ご存じの方も多いかと思われますが、法的には離婚に先立って別居をすることは必要とはされておりません

ご夫婦で同居しつつ離婚に関する協議を行い、離婚も含めた離婚条件について合意に達した時点で離婚届を提出し、その後、別々に暮らすような例は多いかと思います。

このように、離婚について双方合意ができる場合には、別居の有無自体が法的に意味を持つことは特にありません

なお、日本以外の国では、離婚前に一定期間の別居が必要条件のようになっている例もあります(オーストラリアなど)。

3 離婚事由の有無の判断には影響がある

他方、離婚自体について双方で合意ができない場合や、他の離婚条件(親権、財産分与等)などが原因で離婚の合意ができないと、「別居の有無」や「別居期間」が法的に意味合いを持ってくる場合があります

協議での離婚が整わない場合、通常、離婚手続きは、「調停」→「訴訟」と手続が進行していきます。そして、訴訟手続の最後の段階で判断される判決では、離婚事由の有無により離婚が認められるか否かが左右されます。

その離婚事由として挙げられている「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)の判断に際し、判決直前までにおける「別居の有無」や「別居期間の長短」が大きな要素として加味されることになります。

なお、被告(離婚を請求されている側)に、「配偶者に不貞な行為があったとき」などの他の離婚事由(民法770条1項1号~4号)がある場合は、通常、別居の有無にかかわりなく判決で離婚が認められることになります。

4 ご依頼後も同居し続ける場合も

当サイトに限っての話にはなりますが、何らかの離婚手続を依頼される場合、既に別居状態になっている、または、直前に別居状態をしてから依頼される方が比較的多いと言えます。

他方、レアケースにはなりますが、当サイトにご依頼いただいたあともご夫婦で同居を続けた上で、離婚手続きを進行することもあります。

その場合は、離婚に関する交渉は弁護士を通じて(または調停の席上で)行うことになりますので、ご夫婦間で離婚に関する交渉や協議は直接されないようお願いさせていただいております。

5 最後に

以上のとおり、離婚前の別居は法的には必須ではありませんが、離婚判決を左右する「離婚事由」の有無の判断には重要な意味合いを持ってくることになります。

もし、今後の離婚手続きに際し、別居すべきか否かについてお悩みがあるような場合には、法律相談の際に、この点につきましてもご相談いただけましたらと思います。

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弁護士 澤藤 亮介

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