全く帰国せずに離婚調停で離婚が可能?
1 海外に居ながら離婚調停の申立て
今回のコラムでは、離婚を希望する夫(又は妻)が海外、妻(又は夫)が日本に在住している場合における離婚調停(夫婦関係調整調停)を取り上げたいと思います。
まず、どこの裁判所に申し立てるかという問題ですが、調停の相手方住所地を管轄する家庭裁判所に管轄があることになりますので、今回の場合は問題なく日本の裁判所で申立てができることになります。
2 調停期日の進行
申立人が海外に滞在している場合であっても、弁護士に調停事件を依頼していれば、弁護士が代理人として調停に出席(裁判所への出頭又は電話会議での参加)をする形で離婚調停を進行させることが可能です。
当サイトでは、ご依頼人様が期日に出席できないことを前提に、期日間で綿密な打合せや提出書面の準備を行った上で、期日当日、弁護士のみで調停期日に参加するなどしております。
3 期日当日のご依頼人との連絡
なお、調停当日、SkypeやLINE電話など利用して、出席できないご依頼人様が調停委員と直に話すことは通常許されておりませんが、調停期日は期日中に待ち時間(調停室を離席)が多く生じるため、その際、弁護士がご依頼人様とSkypeなどの音声通話でやり取りをすることは可能です。
当サイトでも実際に弁護士が離席をしている間、ご依頼人様とSkype等の音声通話で連絡をとりつつ期日当日の状況等をお伝えし、その場でご依頼人様のご意向等を伺った上で、再度、調停委員と話をするなどの対応をしております。
4 離婚成立時の裁判所への出頭はもはや不要?
調停期日での協議の結果、離婚自体やその他の離婚条件について双方が合意に達しますと、いよいよ調停での離婚成立となります。
離婚は法律上重要な身分行為であるため、従前は、代理人弁護士が就いている状態であっても、最終期日には双方ともご本人が出席することが求められ、最終期日当日、担当裁判官が調停条項を読み上げ、両当事者の意思を最終確認した上で、離婚が成立するとの流れでした。
しかし、昨今の新型コロナウイルス感染症の流行により、最近は、この取扱いがかなり変わってきたように思えます。
実際には裁判所の判断によりますが、具体的には「調停に代わる審判」という手続を積極的に利用することにより、ご本人が遠方在住などを理由として出頭が困難な場合、最後まで裁判所に行くことなく離婚することが容易になりました。
5 最後に
以上のとおり、海外に居ながら離婚の調停を進めていくことについては、弁護士に依頼することにより従前から可能でしたが、離婚成立時は裁判所に行くことが求められていました。
しかし、調停に代わる審判の活用により、最後まで裁判所に出頭することなく離婚成立が容易になってきましたので、この点は、離婚調停を考えている海外在住の方にとり大きな利点と言えるでしょう。