不倫相手への慰謝料請求ができるのは日本だけ?
目次
日本では当たり前の請求権
不倫相手に対する慰謝料請求は、日本では当たり前のように行われ、裁判外の交渉事件も裁判上の事件も相当程度発生しているものと思われます。
しかし、世界を眺めますと、不倫相手に対する慰謝料請求が認められる国や地域は例外的であり、先進国の中では日本くらいしか認められていないと言われているくらいの状況なのです。
海外ではほぼ認められない請求権
日本では、戦前から判例において不倫相手に対する慰謝料請求が認められており、不法行為の成立要件を欠く場合や立証不十分などでもない限り、原則として認められている権利と言えます。
しかし、諸外国の例を確認しますと、自己の配偶者に対する慰謝料については肯定されることはあっても、その不倫相手に対する慰謝料請求まで認められる国はほとんどない状況です。
その理由としては、各国の文化や宗教などにも影響するところではありますが、ドイツでは「失われた愛の慰謝料は存在せず」などの格言があったりします。
準拠法との関係
不倫相手に対する慰謝料に関する日本と他国の差異は、問題が国内に止まらず国際間に及ぶ場合に非常に大きな問題となってきます。
当事者に外国人が含まれる場合や不貞行為を行った場所が海外の場合、準拠法(どの国の法律が適用されるか)の問題が生じ得ますが、仮に準拠法が日本ではなく当該国とされる場合、当該国の法律や判例で不倫相手に対する慰謝料請求が認められていない場合には、慰謝料請求をなしえない(または裁判上認められない)ということになります。
日本での判例変更の可能性も
また、日本国内では現在のところ認められている不倫相手に対する慰謝料請求権につきましても、海外の多くの国や地域で認められていないという世界情勢や、多くの外国人が日本を来訪、生活するようになった現状を踏まえますと、今後、判例変更によって認められなくなる日がくるかもしれません(現に学説上は否定説ないし消極説の方が有力とされています)。
国際的な要素がある場合は必ずご相談を
以上のように不倫相手に対する慰謝料請求は、比較法学的には日本が特異な状況にあると言えますので、上述3のような海外の要素が含まれる事件では、日本の法律に拠るのか否かについての判断が必要となってきます(実際は準拠法が日本でないにもかかわらず、交渉の結果、支払う必要がない慰謝料を支払ってしまうなどの可能性)。
かかる要素がある慰謝料請求事件につきましては、事前に法律相談の上、弁護士からの意見を確認していただくと宜しいかと思います。