不倫の証拠(LINE・メール)
目次
LINEやメールを証拠で使いたいが大丈夫?
私がよく承る離婚や不倫慰謝料関係のご相談で、「不倫に関するLINEやメールの証拠を得ることができましたが、証拠として使うことができますでしょうか。」「不正アクセスで捕まってしまうことはないでしょうか。」というご相談をいただくことがしばしばあります。
今回は、不倫に関するLINEやメールなどにつき、裁判実務を踏まえつつ解説したいと思います。
論理的には問題となる場合も
例えば、①夫(妻)のスマホの本体ロックを解除し、②LINEアプリを開いて特定の相手とのトークの内容を確認、③その画面を自分のスマホで撮影し、④さらにLINEのトーク履歴送信機能を用いて自分のアドレス宛にトーク履歴を転送したとします。
論理的には、①から④までの行為は、配偶者に対する行為とは言えプライバシー権で民法上の不法行為となる可能性があります。また、④についてはネットアクセスを介すため、刑法上の不正アクセスに該当する可能性もあります。
また、家事事件の裁判では刑事事件の裁判ほど厳格な運用はされませんが、証拠収集の方法や過程の違法性が強い場合は証拠から排除され、不倫の立証に使えなくなる可能性もあります。
実際の裁判などではどうなる?
ただ、論理的に問題になるか否かと実際の事件で問題として取り上げられるかは全く別の問題と言えます。実際の調停や裁判では、このような収集方法で得た証拠が提出されることはよくあることであり、違法な証拠として排除されることや相手方からプライバシー権侵害等を理由に反訴されることはほとんどないというのが実情と言えます。
また、刑事処罰についても、不正アクセスされた側が実際に捜査機関に被害届や告訴をすることや仮に行ったとしても実際に捜査や起訴まで持ち込まれるケースはかなり例外的な場合と言えます。
収集方法や使用方法には慎重な検討を
以上のように、不倫に関するLINEやメールの証拠については、論理的に細かく見れば法律上問題視することはでき得る一方、現実に問題となるかは相手方の出方やその証拠をどのように用いるかなどにより、その多くは問題となっていないというのが現在における実務上の実情かと思われます。
そもそも不倫は一般的には隠れて行われるため、その被害者側がその証拠収集のために法律上やや問題がある行為に及ぶことはある程度やむを得ない部分もあり、実際の裁判でもある程度大目に見ている部分があるというのが経験上での実感です。
もっとも、LINEやメールで得た証拠は使用することはできるものの、相手方の出方次第では法律上問題視される可能性があることを予め認識しておくことはとても重要だと思われます。
不倫や離婚問題で弁護士に相談される際には、今後の証拠の収集方法や、証拠として利用できるか否かなどについても予めアドバイスを受けておくと宜しいかと思います。