不倫慰謝料を免れることができる場合とは
目次
1 不倫慰謝料の不法行為が成立しない場合
不倫に基づく慰謝料請求は、民法上の不法行為の成立が根拠となります。逆を言うと、不法行為の要件が一つでも欠けると、不法行為が成立せず、慰謝料請求も認められないということになります。不倫慰謝料の場合、一般的には①加害行為(性行為等)、②故意又は過失(既婚者との認識)、③損害発生、④加害行為と損害の間の因果関係が成立要件となり、論理的には、どれか1つでも欠ければ慰謝料請求が否認されることになります。
2 不倫開始時に夫婦関係が破綻していた場合
不倫慰謝料請求の場合、たとえ不法行為の要件を全て満たしていたとしても、不倫開始時に夫婦関係が既に「破綻」していた場合は、原則不倫慰謝料は認められないというのが、現在の最高裁判例です(平成8年3月26日)。実際の裁判でも、被告側はこの「破綻」の抗弁をよく持ち出しますが、夫婦間で相当長期間の別居あったり、すでに離婚調停をしていたりなど事情があるほかは、なかなか「破綻」は認められないのが実情と言えます。
3 不倫慰謝料請求時に時効が成立している場合
不法行為に基づく慰謝料請求の時効は3年と比較的短いので、時効が成立している場合は、時効援用の意思表示をすれば、慰謝料請求を免れることができます。もっとも、不倫慰謝料の場合、時効の起算点(どこから期間をカウントするか)につき、その夫婦が離婚しているか否かによって変わってきたり、被害者が「何」を知ったときから起算するかなどの問題がありますので注意が必要です。
4 不倫の事実などを相手方が立証できない場合
民事訴訟法上、不法行為に基づく請求については請求する側(原告側)に不法行為が成立することを立証する責任があり、被告側が争った事実につき、原告側が立証責任を果たせない場合は、たとえ不倫交際の事実があっても裁判では慰謝料が認められないことになります。
つまり、真実として既婚者との不倫交際があったとしても、請求された側その事実を否認し、請求する側の手持ちの証拠での立証不十分の場合は、請求を免れてしまうということもあるのです。
5 不倫慰謝料に応じる前に専門家に確認を
他にも、慰謝料請求が権利濫用にあたる場合など、客観的には不倫交際があったとしても、法的見地からの検討により慰謝料を免れることができる場合は意外とあります。それを知らずに本来であれば支払う必要がない慰謝料を一旦支払ってしまったあとで、これを争うことは至難の業です。不倫の慰謝料請求を受けると焦りがちですが、本当に支払う義務があるのかにつき、一度は法律相談で確認するといいでしょう。